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レ ミゼラブル

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テレビのCMで元AKBの前田敦子がレ ミゼラブルで流れる曲を聞きながら涙を流しているシーンがある。

あの名曲は英語で

I dreamed a dream.

言語学者はどんなところに目が行くのかというと、

(1)dreamには過去形が二つある。dreamedは正しいのか?dreamtじゃないのか?
(そもそもなんで二つ過去形があるのか?それは古英語では単数専用の過去と複数専用の過去があったのです。その名残です。)

(2)この英語は同族目的語構造で、夢(dream)を夢見る(dream)の形になっている。(動詞と目的語と意味の親戚で成り立っている。しかも、動詞も名詞も同じ形!)果たして、原題のフランス語はいかに?

(3)邦訳は、夢を夢見た!なんて不細工な訳ではなく、【夢破れて...】になっている。果たして、夢に【破れる】が使える言語は日本語特有の現象なのか?

この3つの難題を山手線でずっと考えていた。
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(1)の過去形も過去分詞も同じ形が二つある問題は、実はカナダで何度も同僚の言語学者と議論を重ねてきた。

包括的ではないかもしれないが、ヒントになりそうなことをまとめる。

A burnt child dreads the fire.ということわざがある。やけどをした子供は火を恐れる。(あつものにこりてなますをふく)

burnはburnedもburntもある。ただ、このことわざでburned childは難しいのだそうだ。一回きりのやけどだけでももう火を見ただけで恐いという一回切りのトラウマ過去がburntで表されるというのだ。(burnedだと1回切りの性質が出にくいのだという)(これは専門用語でSemelfactiveという:1回性の強調と呼ぶ)

夢はおそらくあきらめる前に、何度も見るのだろう。何度も見た夢を仕方なくあきらめる。だったら、それはI dreamEDの方がふさわしいのかもしれない。

(2)原題のフランス語は実は過去形ではない。もっと入り組んでいる。J’avais rêvé d’une autre vie.が原題で、別の人生を夢見た。が直訳である。英語のような単純過去ではなく仏語では大過去を使っている。大過去は、現在との大きな隔たりを示す。別の人生を夢見ていたんだが→実際は夢見た人生を過ごせてはいない、無念だ。このニュアンスがうまく出ている。だから、夢やぶれて...に訳されるのは素晴らしい。

(3)【夢破れて...】てと訳した翻訳者はすごい。僕の今の悩みは、夢と破れるの語彙の関係性。実はまだ悩み中。

夢と破れるの間に無理してでも助詞を入れるならば何がはいるのか

夢が破れて?

夢に破れて?

間違ってでも、【夢を破れて】はできない。破れるは自動詞でしょ。だから助詞の【を】はダメでしょ。という単純な問題じゃないんだなぁ。夢って、自動的に破れるんですか?破れるものなのか?そういうことを考えてしまうのです。

 

 






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Dr.Tatsuhide Mizoe

溝江達英

言語をこよなく愛し、学んだ外国語は20ヶ国語以上にも上る国際言語学者。カナダ・ラヴァル大学にて、講義をフランス語で行い、受け持つ授業は北米最多クラスの年間270コマ超の、超人気の言語学教官として活躍中。

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