溝江達英【公式】

方言が一大勢力になる

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ドイツで星の王子様の方言版を買い集めたことがある。

タイトルを見る限り、明らかに仲間はずれなものがある。(写真参照)

それは3段目の一番最後。

これはドイツ語のグループではないのは見当がつく。(何語でしょう?)

(実はリトアニア語版です。)

リトアニア語版を除いた残りは、ほぼすべて3語の構成が共通している。

Dで始まり、Kが真ん中にあり、Pで終わる。

最初のDは定冠詞(英語で言うTHE)

Kで始まる真ん中の語は形容詞

最後のPで始まる語はプリンス(王子様)

この中で唯一、真ん中の形容詞がLで始まるものがある。

3段目の真ん中(リトアニア語版の真横)

De lütte Prinz というのが仲間はずれに見える。

この仲間はずれのヴァージョンは低地ドイツ語版。

実はこの低地ドイツ語が変化して現代英語へ進化していく。
(よく見れば、 lütte は英語のlittleに似ている。)

まるで田舎娘(低地ドイツ語)がメジャーデビューしていくイメージで見てほしい。

英語はドイツ語の一方言が勢力を得て一大権力を握っていくのが、ドイツ語の様々なヴァリエーションを比較するとよく分かる。

ずっと昔から英語=方言研究だと確信して、一人で、低地ドイツ語が話される地域に出向いた。

そしてこの現代低地ドイツ語の元になる古い言語を見つけた。それが古代ザクセン語という言葉。この言葉は5700行あまりしか残っておらず、あとは焼失してしまった言語。

日本に古代ザクセン語の専門家がいないものか必死に探し、運良く専門家を見つけ、弟子入りを申し込み、そこで温かく迎え入れてもらえた。

師匠となった早稲田大学名誉教授の上田稔先生はほぼ毎日朝5時に電話をかけて僕を起こして、朝早くから、楽しそうにいろいろな言葉を教えてくださった。あの笑顔が忘れられない。

僕は朝5時に原付バイクを飛ばして、先生のお宅へ伺って、ゲルマン語諸語比較文法を教えていただいた。幸せな2年間だった。

上田先生の奥様も、娘さんも、超一流の言語学者。上田先生の娘さんは、アメリカのブラウン大学スラヴ語科の科長で、日本人でありながらアメリカ人にチェコ語を教えている。奥様は英作文の大御所。

お父様である上田先生は娘さんには、僕ができない言語を専門にしなさいと言っていたという。それで娘さんはチェコ語の専門家になったのだという。

狂うほど(今も狂ってるが)愛してしまった言語学。書棚を整理しているとふとあの頃の情熱が蘇ってくる。

 

prince

 






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Dr.Tatsuhide Mizoe

溝江達英

言語をこよなく愛し、学んだ外国語は20ヶ国語以上にも上る国際言語学者。カナダ・ラヴァル大学にて、講義をフランス語で行い、受け持つ授業は北米最多クラスの年間270コマ超の、超人気の言語学教官として活躍中。

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