溝江達英【公式】

気になる複合名詞

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やせる薬は、別に薬がやせるわけではない。

(薬が人をやせさせるからやせさせる薬なのだろうが、さすがにそうは言いにくい)

頭痛薬も、この薬を飲んだら頭が痛くなるわけではない。

名詞はワンセットに使われると能動だとか受動だとかの関係性が
一気に見えなくなる。

そういう意味では動詞単体に送られる送り仮名の機能は能動・受動の関係をはっきり示す。

殺という漢字に「す」を送れば能動に、「される」を送れば受動になる。

殺す (加害者)

殺される(被害者)

でも、殺人事件と名詞表現になると、殺した人の話なのか、殺された人の話なのか、はたまた、加害者、被害者両方の話なのか。関係性はぼやける。

名詞表現を好むようになると複数の解釈を可能にし、読み手が読みたいように読める現象が蔓延する。

ソシュールが有名にした例にle train de Paris (パリの電車)というのがある。

パリの電車という名詞句の解釈。

(1)パリからの電車(パリ発)
(2)パリへ向かう電車(パリ行き)
(3)パリ市内のみを走る電車(パリ市街限定)

どれでも意味はOKで、チョムスキーはなんとか一義的な解釈を求めて一生懸命この課題に取り組んだが決め手に欠ける答えしかだしていない。

なぜこのようなことが気になったかというと、最近、T大教授の履歴書を英訳していて、気になった表現があり、それをネイティブスピーカーに聞いても、答えを得られなかったからだ。

水関連企業のコンサルをしている。

この文章の中の、水関連企業という言葉の意味が分からない。

水の何をしているのかを何も言っていない。

日本語から外国語へ翻訳する時、この日本語の分かったようで分からない【意味が空っぽの複合名詞】にめちゃくちゃ苦しめられる。

責任の所在を明らかにしたがらない日本語の特性がこの複合名詞の問題にもあぶりだされている気がする。

 






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Dr.Tatsuhide Mizoe

溝江達英

言語をこよなく愛し、学んだ外国語は20ヶ国語以上にも上る国際言語学者。カナダ・ラヴァル大学にて、講義をフランス語で行い、受け持つ授業は北米最多クラスの年間270コマ超の、超人気の言語学教官として活躍中。

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